2019年の春に東京都美術館で開催された「奇想の系譜展」を見に行きました。
「奇想の系譜」とは、美術史家・辻惟雄氏によって書かれた美術書のことです。その本にかかれた奇想の画家とは、伊藤若冲・曽我蕭白・長沢芦雪・岩佐又兵衛・狩野山雪・歌川国芳の6人のことです。
6人は50年ぐらい前までは、あまり注目されていませんでした。しかしこの「奇想の系譜」という書をきっかけに、注目を集めるようになり、今では人気のある画家になりました。この展覧会では6人に加えて、白隠と鈴木其一が加わっています。
それでは今回、印象的だった作品の感想を語ります。
スポンサーリンク
目次
印象的だった作品たち
旭日鳳凰図(伊藤若冲 宮内庁三の丸尚蔵館)
奇想の画家の中でおそらく人気ナンバーワンの絵師です。2000年の京都国立博物館で行われた若冲展をきっかけに人気が出て、その勢いは絶えません。
旭日鳳凰図は、代表作「動植綵絵」を完成させる前の作品です。鳳凰の独特な雰囲気とその完成度の高さに目を奪われることでしょう。めったに見られないので目を皿のように観ること必須です。
虎図(伊藤若冲 プライスコレクション)
虎ですが猫のようなかわいらしさと愛嬌があります。虎の威厳さや怖さがありません。ユニークな虎の図です。
群仙図屏風(曽我蕭白 文化庁)
この展覧会でこの作品が奇想度の高さではナンバーワンといってよいです。なんだこれは?というくらい強烈な印象を残します。グロテスクと形容してもいい濃厚な作品を、国の文化庁がこの屏風の所蔵先というのが、これまた興味深いです。
なめくじ図(長沢芦雪)
ナメクジだけ描いた面白い作品です。なめくじ一匹の軌道の跡が、ペンの試し書き(走り書き?)みたいです。奇想な発想という感じでしょうか。
スポンサーリンク
方広寺大仏殿炎上図(長沢芦雪)
大仏殿が小さくて、炎のほうが大きく描かれています。署名も一緒に炎上している様がユニークで、さすがと思わせます。炎上図と言えば、川端龍子の金閣炎上という名品がありますが、それに匹敵する名品といったらいいすぎでしょうか。
岩佐又兵衛 自画像(MOA美術館)
山中常盤物語絵巻や旧金谷屏風の作品ももちろん素晴らしいのですが、印象的なのが自画像です。なにか弱弱しい感じの人物になっています。
椅子に座っている自画像というは珍しいです。戦国時代の武将の子供として生まれるも、一族が滅んだ時、2歳だった又兵衛だけ救われたという凄い経歴を思うと、見入ってしまいます。
火消千組の図(歌川国芳 千葉・成田山霊光館)
国芳の肉筆は少ないので貴重です。「千組」という江戸町火消し組の行列を描いたものです。今でいう消防隊員の様子を描いたということですが、こう見るとエンターテイメントに見えてしまうのが、この絵の魅力です。力作ですね。
奇想だからこそ今輝いている
いかかだったでしょうか。 美術書「奇想の系譜」 に発表された50年前では奇想と言われていた作品は、今でも確かに奇想で、ヘンテコで、あだ花かもしれません。しかし奇想だからこそ輝いてるのです。
昔の強烈な個性は、その後何十年後に通用し、生き残る。これは絵に限りません。音楽や文学もそうです。
奇想の画家の作品に今後も注目してみましょう。美術書「奇想の系譜」も文庫本にもなっていますから、まだの方は一度読んでみてはいかがでしょうか。
スポンサーリンク